2012.10.15

竹田恆和客員教授(JOC会長、IOC委員)に2012ロンドンオリンピックと2020オリンピック・パラリンピック招致活動についてお話をうかがいました。

日本中を熱狂させたロンドン・オリンピックから2ヶ月。余韻に浸る間もなく、竹田恆和客員教授は世界中を駆け巡る日々を送っておられます。そんな超過密スケジュールの合間をぬって、お話をうかがいました。


竹田恆和客員教授
竹田恆和客員教授


ロンドン大会を振り返って


今回のロンドン大会は、日本がオリンピックに選手団を派遣して100周年にあたる記念すべき大会でした。ストックホルム大会に参加した選手団はわずかに4人(選手2人、役員2人)でしたが、今大会に派遣された選手団は総勢518人(選手293人、役員225人)であり、隔世の感を禁じ得ません。先人たちの努力に感謝してもしきれません。


競技結果は皆さんご存知のとおり、過去最多となる38個のメダル(金メダル7個、銀メダル14個、銅17個)を獲得することができました。あまり報道されてはいませんが、メダリスト・入賞者を合わせた合計数80も過去最多となる成績でした。派遣された選手団に限らず、裏方で支えてくれた方まで含めて、チーム・ジャパンが一丸となって全身全霊で戦い抜いた結果であり、日本オリンピック委員会会長として誇りに感じています。


今大会では、特定の競技に偏らず、幅広い競技で好成績を残すことができました。団体競技や団体種目でのがんばりも目立ち、「絆」「チームワーク」といった日本人らしい戦いを通じて、目に見えないけれどもスポーツが持つ大きな力を、国民の皆さんに実感していただけた大会であったと感じています。被災地の皆さんにも勇気や元気を届けられたと信じております。


 

慶應義塾から塾員・塾生合わせて7人がオリンピック・パラリンピック大会に出場したことについて


彼らの努力に敬意を表するとともに、慶應義塾に身を置く一人として大変嬉しく思います。私自身も1972年ミュンヘン大会、1976年モントリオール大会に馬術競技で出場しましたが、その経験はかけがえのない財産となっています。彼らにとっても、人生の大きな糧になると思います。


少し古い話になりますが、ロンドンにゆかりのあるエピソードとして思い出されるのは、1908年ロンドン大会でのタルボット司教(アメリカ)の言葉です。司教は選手や役員を前にしたミサで「オリンピックで重要なことは、勝利することより競技することにある」と説いたといいます。本当に重要なのは、勝敗の結果ではなく、よく戦うこと、つまり、努力することである、という意味です。戦前・戦中・戦後に塾長を務められた小泉信三先生が「練習は不可能を可能にす」るとおっしゃっておりましたが、これも同じ意味です。


今大会に出場された7人の方には、今大会での経験をもとに、オリンピック・ムーブメントの担い手として活躍されることを期待しています。


 

2020年のオリンピック・パラリンピック大会の招致活動について


東京を含め5都市が立候補し、今年5月に行われた第一次選考を東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)の3都市が通過しました。いよいよ来年9月に開催都市が選出されます。


東京の弱点として国民の支持率の低さが指摘されています。国際オリンピック委員会が独自に実施した世論調査の結果によるものですが、日本人ほどオリンピックを支持している国民はいないと思っています。ニュースでも大きく取り上げられましたが、ロンドン大会後に銀座で行った凱旋パレードには50万人もの人々が集まりました。オリンピックが好きでなかったら、あれほどの熱狂は生まれないはずです。


あまり知られてはいませんが、平和の祭典であるオリンピック大会は単なる国際競技会ではありません。多くの国際交流・文化交流の催しも開催されます。世界の人々と交流できる貴重な機会なのです。前回東京でオリンピックが開催された1964年、私は高校生でしたが、その時の感動は今でも深く胸に刻まれています。あの感動を、一人でも多くの子どもたち、若者たちに体感してもらいたいと切に願っています。


2016年大会の招致には破れましたが、日本のスポーツ推進はもちろんのこと、東日本大震災からの復興のシンボルとして、日本に明るさと元気を取り戻す起爆剤として、2020年大会が東京で開催されるよう、最後まで全力で招致活動に取り組んでいく所存です。


 


竹田 恆和(たけだ つねかず)
スポーツマネジメント専修客員教授。日本オリンピック委員会(JOC)会長、国際オリンピック委員会(IOC)委員、第22回オリンピック冬季競技大会(2014ソチ)調整委員会委員、第23回オリンピック冬季競技大会(2018平昌)調整委員会委員。