修士(医療マネジメント学)

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養成する人材像

今日、保健・医療・福祉機関、並びに関連ビジネスには、これまで以上に、質の高いサービスを効率的に提供することが求められるようになっています。また、サービスを提供する際には、各個人のニーズを踏まえて、きめ細やかな対応をすることが求められるようになっています。本プログラムは、それらを実現するためのマネジメントについて、研究や、企画・実践できる人材を育成することを目的としています。

本プログラムの特徴

今日、保健・医療・福祉機関並びに関連ビジネスには、質の高いサービスを効率的に提供することが求められています。同時に、各個人のニーズに即したきめ細かなサービスを調整・統合することが求められています。本プログラムは、それらを実現するマネジメントを研究・企画・実践できる人材を育成することを目的としています。つまり、病院のマネジメントだけではなく、介護施設、福祉施設、これらの領域に関連する民間企業など広い領域で将来活躍できる人材を輩出したいと考えています。

本プログラム入学者-出身大学・学部

本プログラムへは、慶應義塾大学の卒業者だけではなく、他大学の卒業者も多数入学しています。本プログラムの全入学者のうち、他大学卒業者の占める割合は、およそ7割です。また、入学者の中には、アメリカ、カナダ、中国、台湾の大学など、海外の大学を卒業した者もいます。入学者の出身学部も様々です。本プログラムには、医学・歯学・薬学・看護学といった、医療系学部の出身者とともに、非医療系学部(自然科学系学部、社会科学系学部、人文科学系学部)の出身者も数多く入学しています。従来、我が国では、医師、看護師、薬剤師・・・とそれぞれ自己完結的な教育プログラムの中で養成されて来た為に、医療の専門職の間でさえも言語と視点が共有できないことが、医療のマネジメントを難しくしています。その意味では、多様な背景の学生が集まって学ぶ学際的な環境こそが、医療マネジメントに最適な教育環境であると考えて大切にしています。

本プログラム入学者-新卒者と既卒者(職務経験を持つ者)

本プログラムの入学者には、新卒者と既卒者の双方の者がいます。全入学者のうち、既卒者の占める割合は、およそ7割です。既卒者の中には、医師・歯科医師・薬剤師・看護師などの保健医療福祉分野の専門職として勤務していた(勤務をしている)者だけでなく、公認会計士や税理士など、保健医療福祉分野以外の専門職として勤務していた(勤務をしている)者や、その他、一般企業や公的機関で勤務していた(勤務をしている)者がいます。また、社会人の学生の中には、退職したり休職したりして学業に専念する者もいますが、勤務先の理解を得て勤務時間を調整しながら、仕事と学業を両立させている者もいます。

講義概要

本プログラムでは、他プログラムと同様に、導入教育、分析手法に関する教育、専門教育の3つの軸で、教育を進めています。

  1. 導入教育
    入学者の出身学部が様々であることや、入学者には新卒者と既卒者の双方の者がいることなどから、本プログラムでは、バックグランド等が異なっていても、一同に専門教育を受けることができるように、主として1年次の学生を対象として導入科目を開講しています。例えば、医療系学部の出身者は、医療関係の知識は十分に備えていますが、その他の分野の知識を十分には備えていません。また、非医療系学部の出身者は、その者が卒業した学部に関係する知識は十分に備えていますが、医療関係の基礎知識を十分には備えていません。このため、上記のように、多様なバックグランドを持つ学生すべてが、各自の不足している知識を習得し、専門科目の中で一同に議論を行うことができるように、関連する基礎知識について解説する導入科目を設定しています。これらの科目は、臨床入門、社会保障論、ヘルスケア倫理学、高齢社会デザイン論、経営戦略論です。
  2. 分析手法関連教育
    本プログラムでは、基礎教育と同時に、疫学や統計学といった、事物を分析・評価する際の科学的手法についての教育に強く取り組んでいます。しばしば、EBMとか、Evidence based medicineということばを聞きます。この考え方は、通常の臨床行為についてのみ重要であるのではなく、医療組織等の経営や医療制度の構築においても同様に重要となります。今までは、"勘と権威に頼った後ろ向きのマネジメント"でしたが、近年では、臨床データの実証的な分析に基づく組織運営や、制度設計が求められるようになっています。分析手法を習得することで、非医療系の学生も、医療の専門職と対等に議論する武器を持つことができます。
  3. 専門教育
    上記の基礎知識を備えた学生を対象として、本プログラムでは、より専門的な教育を展開しています。これら専門科目は、本プログラムの目的を達成する上で不可欠です。このため、本プログラムの学生には、上記の分析科目と同様に、専門科目についても可能な限り多くの科目を履修することを推奨しています。各科目は、本研究科の専任教員だけでなく、慶應義塾の多様な学部・研究科に属する教員が担当していますが、共同担当することによってその学際性をより発揮している科目もあります。例えば、「ヘルスサービス人的資源管理論」では、医療に関する専門職の特性と課題を医学部の教員が、一般的な人的資源管理の理論を経営管理研究科の教員が講義し、更に、これを統合するようにしています。このような講義を通じて、医療の現場の経験のある学生にとっては、普遍的な理論を学ぶことを通じて、今までの断片的な経験を体系化することができます。また、医療の現場の経験のない学生にとっては、医療の現場の複雑さを体系だって理解することができます。なお、専門科目として、看護学、公衆衛生学、スポーツマネジメント学の専門科目も原則として履修することができます。それぞれの学生の専門や将来の志向に合わせて、幅を広げることができます。いずれの科目においても、理論的側面と実践的側面の双方を重視した授業を行っています。その際、知識習得型の教育にとどまらず、問題解決能力を養うための教育も重視しています。このため、授業の中では、教員が、伝統的な講義だけではなく、スモールグループディスカッションなど、他の教育手法を採用することも少なくありません。

インターンシップ

本プログラムでは、学生が実務に関する知識・技能を習得することができるように、学外の組織で実習等を行うインターンシップの制度を準備しています。インターンシップ先は、地域の中核病院、高齢者向けの専門病院、国立病院機構本部、大学病院の看護管理部門、製薬会社、保険会社、介護サービス関連企業をはじめ多様です。毎年、多くの学生が、第1学年と第2学年の間の春休みに約一か月間実習等を行っています。これによって、例えば、医師や看護師がそれまで全く経験の無い民間企業を体験したり、非医療系の学生が病院など医療・福祉サービスの現場を体験したりすることもできます。また、「インターンシップ関連科目」では、インターンシップの受け入れ先の担当者が非常勤講師として実務に関する体系だった教育を行います。つまり、学生は、インターンシップでの観察・経験を、更に授業を通じて、整理し洞察を深めることが可能になっています。なお、インターンシップ制度を利用して観察実習等に参加した学生は、インターンシップ先で課題を見出し、それを題材に学位論文をまとめることも可能です。理論と実践を架橋した「課題研究論文」は、通常の「修士論文」と同等の学位論文として扱われます。

モデルカリキュラム

健康マネジメント研究科では多様な授業科目が提供されています。修了要件を充足すれば、授業科目の履修選択は自由です。モデルカリキュラムは、履修選択する際の一助となるよう、研究領域別に作成されています。したがって、モデルカリキュラムは履修選択を拘束するものではありません。また、実際の履修にあたっては、必修科目や必要単位数などの修了要件を確認したうえで履修科目を選択していただく必要があります。あくまで参考資料としてご参照ください。

モデルカリキュラム

学位論文

第2学年になると、学位論文の予定題目を例年6月初頭に提出、第2学年の12月の学位論文発表会を経て、翌1月に学位論文を提出することになります。テーマは多彩で、学生は、それまでの経験に加え、様々な科目とインターンシップを通じて、1年次を通じて題目を模索したり、絞ったりしていきます。そして、本格的な作成にかかるのは2年目になってからです。しかし、1年目に大いに好奇心と問題意識を刺激しながら多様な科目で基礎の力をつけることが、かえって優れた論文を作成する近道になります。実際に、学位論文提出後、投稿規程に合わせて投稿した論文が、『病院』、『日本医療・病院管理学会誌』、『日本社会精神医学会雑誌』、『作業療法』、『医療の質・安全学会誌』等に受理されるようになっています。