委員長メッセージ

人々の生命と健康が尊重され、誰もが社会の中で安心して暮らせる未来を切り拓く

慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科は、保健・医療・福祉の研究・教育・実践を先導する大学院として、2005年に開設されました。設立の背景には、少子高齢化や疾病構造の変化、医療技術の高度化、人々の健康に関する価値観の多様化などの諸事情に加え、これらを支える社会資源の有限性を看過できなくなった現実もありました。

本研究科は、取り扱う課題の特性を踏まえ、創設以来、諸科学の叡智を結集して総合的かつ学際的な検討を行うことを重んじてきました。研究と教育の両面においてその深さと広がりを追求するとともに、現場との緊密な連携を通じて社会課題の把握・分析に注力してきました。こうした活動が可能となるのは、慶應義塾大学が総合大学として多様な分野の研究者を擁し、また部局間の垣根が低く、他部局との協働体制を容易に構築できる環境を備えてきたからに他なりません。さらに、本学が伝統的に重んじてきた「実学(サイヤンス)の精神」も、その基盤となっています。

この成果として、本研究科では、世界標準にとどまらず、「+アルファ」を備えた独自の教育が展開されてきました。ここには、日本の保健・医療・福祉制度や文化的背景に立脚した独自の価値も息づいています。そして、この教育環境のもとで学んだ卒業生たちは、今日、国内外の多様な領域で人々の健康と福祉の向上に寄与しています。

こうした歩みを通じて、本研究科は学界並びに社会から厚い信頼を得るとともに、わが国を代表する「健康マネジメント」の研究・教育拠点として、未来に向けて進化し続けています。研究者として学術の進展を追求しようとする方、高度な専門知識を修得し実務の発展に尽力しようとする方―その双方にとって、本研究科はかけがえのない学びの場となるでしょう。学術的・実践的問いと高い志を携え、この地に集い、知の地平を拓く挑戦をしていただきたいと願います。先人の知的成果を丁寧に紐解き、課題解決に真摯に臨む─そうした旺盛な探究心と熱意を持つ学生を歓迎します。

健康マネジメント研究科委員長 前田 正一

健康マネジメント研究科
委員長
 前田 正一