遺伝看護分野Genetic/Genomic Nursing
ゲノム情報に基づく多様性を支える看護・ケアの探究
急速に発展するゲノム医療における看護の役割の追究
教員構成
村上 好恵
Yoshie Murakami
E-Mail:ymura[at]sfc.keio.ac.jp※[at]を@に変換してください
分野の研究テーマ
遺伝性疾患の患者・家族への生涯にわたる継続的支援
遺伝的課題を持つ個人・集団に対する看護
ゲノム医療における看護の役割、倫理・法的・社会的課題(ELSI)
修士論文のテーマ
- 希少疾患の小児の遺伝学的検査が親に及ぼす心理社会的影響の評価ツールの検討(2023)
- 消化管過誤腫性腫瘍好発疾患群に関する現状に対する医療者の認識-患者支援に向けた課題の検討-(2021)
- 遺伝性乳がん卵巣がん症候群の未発症血縁者におけるリスク管理への取り組みと心理社会的問題に関する文献レビュー(2020)
- 地域医療支援病院に勤務する看護職の遺伝性腫瘍に関する知識と看護実践の現状(2019)
- 遺伝性不整脈を持つ患者の体験に関する質的研究(2019)
研究キーワード
遺伝/ゲノム情報、遺伝/ゲノム医療、遺伝学的検査、遺伝カウンセリング、遺伝リスク評価、プレシジョンメディスン、ライフステージ、家族内コミュニケーション、意思決定支援、ピアサポート、ELSIなど
分野の紹介
臨床におけるゲノム情報の活用は加速度的に発展し、その情報が適切に活用され、より個別的で効果的な診断・予防・治療に貢献することが期待されています。「第2期健康・医療戦略」では、全ゲノム解析を含むゲノム医療の実装化の更なる発展と患者への還元が強調されています。。さらに、「保健医療2035提言書」では、患者などの当事者による自律的で主体的なルールづくりを優先する時代への転換、や、身体的のみならず精神的・社会的な意味も含めた健康を保つことを目指す「ケア中心」の時代への転換、といったパラダイムシフトの必要性が提言されています。すなわち、患者や家族が新しい情報を自分の人生にどのように活かしていきたいのか意思決定していくために、看護師は最新の知識をもち、そして一次予防・二次予防・三次予防の視点でのケアを提供し続けることを求められています。
遺伝看護分野では、修士論文コースと専門看護師(CNS)プログラムを設けています。
遺伝看護専門看護師は「対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する」ことが期待されます。
遺伝看護を学ぶことができる大学院は、現在4大学です。オンラインを活用し、様々な学習会、抄読会など、4大学の院生が共に学ぶことができる機会を設けています。
4大学合同抄読会の様子
専門科目では、慶應義塾大学病院の臨床遺伝学センター外来の陪席、カンファレンスへの出席を組み入れ、遺伝医療の実際に関する理解を深めています。がんプロ設置科目「先端ゲノム医学」の聴講やがんゲノム医療実装化インテンシブコースにも積極的に参加しています。
また、遺伝性疾患の患者会にも参加し、当事者の視点から遺伝医療の在り方を検討する機会としています。
ゲノム/遺伝医療に必要な専門知識と共に、潜在する倫理的、法的、社会的諸問題(ELSI)を臨床との密接な連携のもとに学び、ゲノム/遺伝看護における実践の発展と研究課題を追求できる人材の育成を目指します。
主な論文
- 村上好恵, 今井芳枝, 武田祐子, 他. (2023) がん看護専門看護師のがんゲノム医療への関与の実態. 四国医学雑誌, 79, 165-172. 4299, DOI: 10.57444/shikokuactamedica.79.3.4_165
- 村上好恵, 川崎優子, 大川恵, 他. (2020). 緩和ケアの場で必要な遺伝性腫瘍の知識と遺伝カウンセリング, ゲノム医療の更なる進化と看護師の役割. エンド・オブ・ライフケア, 4(4), 84-88.
- 村上好恵,川崎優子,武田祐子,他. (2016). 遺伝性腫瘍の患者や家族への看護-日常診療の中でハイリスクな患者を見極める基礎知識と遺伝カウンセリング体制整備の実際と課題-. 日本がん看護学会誌, 30, 315.
- 村上好恵, 柏田孝美, 新貝夫弥子, 山口眞由美. (2015). 遺伝がん看護-正しい知識をもってケアにあたろう:遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)-. がん看護, 20(7), 748-751.
- 村上好恵 (2010). 遺伝性非ポリポーシス大腸がんに関連する遺伝子検査の結果開示後の精神的苦痛と罪責感. 日本看護科学学会誌, 30(3), 23-31.
- Murakami Y, and Suzuki S. (2009). The worries and concern in parents having preschool-aged children with diagnosed a retinoblastoma. Psycho-Oncology 18(suppl. 2): S207.
- Murakami Y, Okamura H, Sugano K et al (2004). Psychological distress after disclosure of genetic test results regarding HNPCC: a preliminary report. Cancer 101(2), 395-403.
修了生の進路
遺伝看護専門看護師、遺伝専門外来、がん化学療法部門(がんゲノム医療等)
メッセージ
遺伝について考えることは、生命そのものについて考えることです。ゆえに、遺伝看護の対象は幅広く、がん、先天性疾患、染色体異常症、皮膚疾患、耳鼻科疾患、循環器疾患などの遺伝性疾患に悩みを抱える当事者とそのご家族、そして、そのことによって妊娠することや妊娠継続について思い悩む方々も含みます。一緒に、新たな看護分野を開拓していきませんか。お気軽にお問い合わせください。