Voices|仲山 英恵 さん

金融の面から医療・ヘルスケア業界を支援していきたい

Profile

仲山 英恵(なかやま はなえ)

慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒で信託銀行に入社。入社以来一貫してマーケット業務に従事。
2023年4月に健康マネジメント研究科修士課程に入学。2024年4月現在、修士2年在籍中。
【公衆衛生学】

健康マネジメント研究科へ入学しようと思ったきっかけは海外での手術

 ロンドン駐在中に手術が必要になったことがきっかけです。私は経済学部出身で、新卒で信託銀行に入社してからは一貫してマーケット業務に携わっていたため、医療とは縁のない世界で生きていました。2017年からはロンドンに駐在しており、ちょうどコロナ禍でロックダウンをしている最中に手術が必要になりました。当時はロンドンで通院していて、ロンドンと日本のどちらで手術を受けるか悩んでいましたが、安心して手厚い医療を受けることができる点で日本での手術を選択しました。一時帰国の負担はあったものの、日本では安心して手術を受けることができ、お世話になった病院の方々への深い感謝とともに医療分野への興味を抱くようになりました。また、患者目線からは日本の医療は本当に素晴らしいと感じた一方で、英国の私立病院で手術入院した場合の費用と比較して10分の1以下というあまりに安い自己負担額に驚き、日本の保険医療制度はこのままで持続可能なのだろうかと疑問に思うようになりました。
2022年に駐在から本帰国し、身辺が落ち着いたタイミングで、これまで自分が学び働いてきた経済・金融の分野と医療分野を結びつけることができないかと考えるようになり、色々と調べる中で健康マネジメント研究科のホームページに辿り着きました。そこで医療分野を経済的な観点で考える医療経済という分野があることを知り、この分野であればこれまでの自分の知識や経験と医療を結びつけることができるかもしれないと強く可能性を感じました。また、私が疑問に感じていた日本の医療制度の持続可能性という点についても医療経済の側面からアプローチしていけることを知り、ちょうどⅡ期に出願できる時期だったため受験を決意しました。今思えば健マネのホームページを見つけたのも偶然で、それまで公衆衛生や医療マネジメントなどの言葉も聞いたことがなかったので、何かが一つでも違っていたら今進学していないかもしれません。ロンドンで手術が必要になったときは落ち込みましたが、今となってはこの経験があったからこそ、新たな道に繋がったのだと感じています。

「医療の価値」に着目した研究

 今まさに修士論文のテーマの絞り込みをしている最中ですが、入学前から一貫して「医療の価値」に興味を持っています。例えば私の働く金融業界で何かに投資する場合、利回りなどの指標が一つの基準となります。一方で医療の場合、人の命や健康の価値を表すことに直結するため、定量的に価値を示すことが難しくなります。人の命や健康の価値をお金で表すことに抵抗がある人はとても多いですが、医療を行うためにも資金が必要です。命や健康は何にも代えがたいという前提に立ちつつも、資金が有限である以上、医療の定量的な価値を比較可能な形で示すことは、有効な資源配分の観点からも必須であると考えています。この問題意識を踏まえ、修士論文では医療技術を一つ取りあげて経済効果という形で価値を示したいと考えています。

医療以外の分野からも挑戦できる健マネの強み

 公衆衛生を学ぶことのできる大学院は他にもありますが、健マネでは医療マネジメント学やスポーツマネジメント学と同じ専修となるため、公衆衛生以外にも医療経営に関わる授業やスポーツに特化した授業なども幅広く受けることができる点が魅力です。公衆衛生のみならず、多角的な視点から医療分野や健康に関わる内容を学ぶことができます。また、総合大学であり研究科横断の授業や他研究科の授業も取ることができるため、様々なバックグラウンドの方がチャレンジしやすい環境だと思います。私の働く金融業界では、大学院に進む方の多くがこれまでの経験を活かしやすいMBAや経済・ファイナンス系を選択しますが、健マネでは医療経営の授業や他研究科と共同の授業があることで、私のように医療と関係のない分野から進学する学生にも強みを活かせる場面があります。同級生の多くは医療関係や製薬企業の出身ではありますが、医療以外の分野から公衆衛生や医療マネジメントの世界に挑戦したい方にも何かしら活躍できる場がある環境だと思います。

金融と医療・ヘルスケアの分野を繋ぐ架け橋になりたい

 金融業界で医療やヘルスケアを学ぶ人は決して多くはないですが、医療・ヘルスケア分野はSDGsの目標の一つでもあり、今後更に注目が集まる分野です。この分野の成長のためには「お金」は必要不可欠であり、金融業界も重要な役割を果たしていくべきと考えています。公衆衛生を学んだ経験と知識を活かして、金融の面から医療・ヘルスケア業界を支援していきたいです。金融と医療・ヘルスケアの両方に明るい人材はまだまだ少ないため、二つの分野を繋ぐ一助となれればと思います。 また、健マネでの学びを通じて研究や新たなことを突き詰めることの面白さを感じるようになったため、修士課程修了後も何かしらの形で研究を続けていきたいと思っています。

健康マネジメント研究科への入学を検討している方へ

 健マネはどの角度からであっても「健康」に関心のある人であれば、バックグラウンドを問わずに学びを深められる場です。様々な分野と重なる学際領域にある学問であり、どんな人でも何かしら重なり合う部分を見つけられるはずです。健マネの学生はバックグラウンドも年代も幅広く、授業のグループワークやディスカッションでは色々な角度からの視点を学ばせてもらいました。特に医療者の方の視点や考え方は、企業で働いてきた自身の考えと視点が異なることも多く、自分の視野を広げるための大きな手助けとなっています。また、プライベートでもキャリアのことやこれまでの人生を語り合う機会も多く、いつも多くの同級生から刺激を受けています。先日行った合宿ではみんなで高尾山に登り、夜な夜な色々なことを語り合いました。健マネはこれまでの人生ではなかなか出会わなかった方々と同級生となり、共に学び成長し合える素晴らしい場だと思います。少しでも興味があれば是非一歩を踏み出してみてください!

(インタビュー2024年4月)